ラオス:メコンと夕陽と

これが、メコンに落ちる夕陽なのか。

             *    *    *

宿の前でトゥクトゥクを降りると、そのまま、まっしぐらにメコンを目指す。

土手の賑わいは、夕方になってますます増してきている。道路に沿って並ぶ出店の列を通り過ぎると、小さいながらも遊園地が設営されている。もっとひなびた、寂しい夕景を想像していたのでこれには面食らったけれど、普段は存在しないアクセントがいろいろあるのだから、かえって面白い写真が撮れるかもしれない、と思い直す。

撮影に夢中になっていたが、ふと西空を見ると、予想を超える速度で、夕陽がメコンに落ちようとしている。
これはやばい。

しばらく歩くと、屋台が並んでいる川縁を見つけた。
その一軒に入ると、メコンを見渡せるテーブルに。

「とりあえずビアラオね」

キラキラと輝くメコンと、落ちようとしている夕陽。
ボーッと眺めていると、目の前にビアラオが置かれた。

「メコンと夕陽に乾杯!」
ラオスでは、これをやらねば。
旅先では、こういうくさいセリフを恥ずかしげもなく口に出すのが肝要なのだ。

胃から全身へと、しびれるような解放感が、じわじわと染みこむように広がっていく。
しっとりと尾を引く泡立ちのビアラオと、雨期明け間際のやや湿った空気が、
外から内から、この身を心地よく包み込み、この心をどこまでもやさしく浮遊させる。
この感覚を、いったいどう表現すればいいのだろうか。
ああ、というため息しか出てこない。

そして、目の前には、メコンと夕陽。
もう、どうなってもいい。
これまで味わったことがない、弛緩と放心。

サンセットを見届けた後は、ゆっくり食事。
食べたのは、チキンラープとカオニャオ。ラープはひき肉と野菜の炒め物。カオニャオは餅米。この粘り気が、またラープとビアラオにぴったりなのだ。

夕食後、メコンに沿ってしばらく歩いてみる。
通りは、人、人、人でいっぱい。警察か軍かわからないが、道の途中で荷物チェックまでやっている。日中から不思議に思っていたけど、いくらなんでも、この賑わいは尋常じゃない。お祭り前夜のような期待と興奮が渦巻いているのだ。きっと特別な行事があるに違いない。でも、それがなんなのかわからない。一体何があるのだろう。

前にも書いたとおり、翌日の7日はオークパンサー(雨安居明け)で、その翌日には有名なボート祭り(メコン川で催されるボートレース)が控えていたのだ。川沿いが露店や遊園地でびっしりだったのは、そのためだったのである。しかし、この時点ではそんなことを知るよしもなく、ただただ、ビアラオに酔い、メコンと夕陽に酔い、謎の喧噪に酔っていた。

ラオスでの最初の夜は、ほろ酔いと興奮に包まれながらも、ゆるゆると更けていく。

6件のコメント

  1. あづま川
    2006年11月8日

    わざと、というわけではないのですが、撮影機材を
    明記していないので、わからなくて当然だと思います。
    逆に言えば、わからないほどGRDの写りがよいという
    ことでもありますね。とはいえ、まだまだリバーサルとは
    色合いに差はありますが。

    返信
  2. ヒョウちゃん
    2006年11月7日

    をっと、読み間違えました。
    そういえば、1枚目以外はちょっとリバーサル独特の色合いが薄いですよね。スキャンの具合かなあと勝手に思っていたです。
    それにしても、GR-Dはよく写りますね…って人ごとのような。
    もっと活用してあげなくては。
    続編も期待してます。

    返信
  3. あづま川
    2006年11月6日

    >ヒョウちゃん
    みんなこうやってビアラオアディクトになっていくのですねぇ。
    ラープとカオニャオの組み合わせは、気に入って何度も食べましたよ。
    夕陽の写真は、GR DIGITALですよ~。記事内のほかの写真も、
    1枚目をのぞいて全部GRDです。もちろん一眼レフでも撮っていますが、
    こちらはメインサイト用に残してあるので、いずれそっちで。
    >crossroadさん
    一句、ありがとうございました。
    旅川柳ではcrossroadさんのほうが先輩でしたね。
    負けないように、こちらもいい句をまたアップしなくては(しなくていいって?)。
    >04matさん
    6月に行かれたのですね。
    ビアラオ・ラープ・カオニャオ、最強の三点セットでした。
    麺類を別にすれば、こればっかり頼んでいた気がします。
    ドラフトは飲みそこねたのです。次回こそ味わってみたいです。

    返信
  4. 04mat
    2006年11月5日

    こんにちは。
    ビアラオ・ラープ・カオニャオ:この3点セットは最高ですね。
    6月にビエンチャンへ行き、すっかり気に入りました。
    ドラフト・ビアラオ飲みましたよ。

    返信
  5. crossroad
    2006年11月5日

    > 胃から全身へと、しびれるような解放感が、じわじわと染みこむように広がっていく。
    > しっとりと尾を引く泡立ちのビアラオと、雨期明け間際のやや湿った空気が、
    > 外から内から、この身を心地よく包み込み、この心をどこまでもやさしく浮遊させる。
    ああいいな
    ビアラオ飲みに
    行きたいな

    返信
  6. ヒョウちゃん
    2006年11月4日

    あづま川さんもいよいよビアラオ信者ですねえ。
    メコンの夕陽とビアラオ、こりゃもう最高でしょ。
    それにしても、メコンのほとり、オークパンサーということもあって、遊園地までできていたのですね。
    たぶん、僕が夕陽を眺めたあたりと同じようなところではないかと思いますが、この時期、意外に空がすっきりしていますね。夕陽は50mmで狙ったのでしょうか。
    ラープとカオニャオの取り合わせ、これまた良しです。
    ああ、ビアラオ飲みたい。

    返信

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