結界が張られているボダナートならマオイストによるバンダ(スト)とは無縁に違いない。おいしいチベット料理を食べるのだ、と意気込んでカトマンズの宿を出る。2時間近く歩きボダナートに到着(バンダ中なので移動手段は徒歩だけ)。12年ぶりにストゥーパと対面した感慨もそこそこに営業中の食堂を探す。聖地に来たのに脳内が食欲にまみれているのも不謹慎だが、今はそれが切実な問題。が、境内の周囲に数あるお店がどこも閉まっているではないか。ここにもバンダの影響は及んでいたのだった。ショック……。
ひもじさに耐えながらストゥーパの周りをぐるぐる回っていたが、もう限界。ちょうど物売りの男が寄ってきたのでダメモトでたずねてみたところ、「一店だけやってるよ」と思わぬうれしい返事が。男に案内してもらい、とあるチベット料理店へ。さっそくトゥクパとモモを。シアワセのひとこと。
ネパールはおいしい(1) – モモの屋台
Katmandu / PENTAX K-7, DA21mm
カトマンズの街角で、湯気が立ち上るモモの屋台を見つけてしまうと、素通りするのはなかなか難しい。ぼくが滞在していた5月初旬は、ちょうどマオイストによるバンダ(ストライキ)の最中だったから、なおさらのことだ。食堂や商店のほとんどがシャッターを下ろしたままで、食いたいものも食えないというもう泣きたくなる状態。そんなひもじさの中で見つけたモモの屋台。「ありがたい、これでまともな食い物にありつける!」と一目散に駆け寄った。
作り方は、餃子の場合とほぼ同じ。人気があるので、蒸したそばから飛ぶように売れていく。ぼくの前には先約がまだ何人もいる。ぼくのモモは、これから蒸し器の中へ。蒸し上がるまでさほど時間はかからないのだが、お腹が空いているので長く感じられる。
写真でも撮りながら空腹を紛らわしているうちに、蒸し上がった。立ち上る湯気。中にはおいしそうなモモがびっしり。それらを葉っぱのお皿に盛りつけ、ピリ辛のたれをたっぷりかけて、できあがり。さっそくほおばる。シアワセ。
ようやく腹が満たされ、エネルギーが出てきたので、その足で夕暮れ時のダルバール広場へ。すると今度はアイスクリーム屋が! デザートにありつけるとは。またまた駆け寄る。ひとつちょうだい。
やはりモモの後はアイスクリームに限ると確信したのであった……。
念のため付記。xxxxはおいしい、というタイトルは、言わずとしれた林望先生の『イギリスはおいしい』からいただいたものである。その昔イギリスへ語学留学する前にこの本を読んだおかげで、イギリス人の味音痴肥えた舌とイギリス料理のまずさおいしさにショックを受けずにすんだ。そのお礼の意味で使わせてもらっている。不朽の名著だと思う。