人と光と音の波に運ばれて、気がつけば、メコンを見下ろせる場所にたどり着いていた。
灯と花で飾られた船が、大勢の人に担がれて、順々に岸辺へと下りていく。
メコンに流すのだ。
この船は巨大な灯籠なのか。灯籠流しのお祭りだったのだ。
船は一艘ずつ、メコンに浮かべられ、放たれていく。
すぐに転覆してしまう船があるのも、ご愛敬。
そのたびに、歓声と悲鳴と笑いが湧き上がる。
そんな熱気も届かない彼方では、ろうそくの火がたゆたいながら、列をなして流れていく。
闇が濃くて川面は見えない。まるであちら側は黄泉の国のようだ。
現世と来世を、漆黒の流れが隔てている。
その闇の川を、大小いくつもの灯籠がゆらめき、運ばれていく。
目の前で、小さな灯籠に火がともされる。
南国の花と葉で飾られている。
そっと、メコンに放たれる。
どのような祈りが運ばれていくのか。どのような願いがこの灯に宿っているのか。
なにもわからないぼくは、ゆらゆらと彼方へと去っていく灯籠を、黙って見送った。
運良くこのような熱気と幻想あふれるお祭りに巡り会えた。
旅の神様への感謝の思いだけを、いっしょに乗せてもらうことにして。
雨期の終わり。そんな微妙な時期にラオスを訪れる機会に恵まれたのは、
偶然ではなかったのだ、と。
2007年3月3日
>ヒョウちゃん
本当に運がよかったです。
毎年10月にあると思うので、狙ってみてください。
秋は休暇が取りにくいんですか?
機会があったら、スコータイの有名な灯籠流しも見てみたいなあ。
>HARUさん
夜のメコンは不気味なほど黒い闇に包まれてました。
それだけに、ゆらゆらたゆたう無数の灯がひときわ幻想的に映りました。
この時期、人魂が出るという話を聞きましたが、じつはこれのことなのかなと思ったり。
たしかに灯火のありがたみはラオスでは深く実感しますよね。
2007年3月2日
こんにちは。
ラオスを旅したとき、夜は暗いのだということを強く感じたのを憶えています。確か、電気の普及もまだ不十分で自家発電しているところもあったと思う。
それだけに、祭りで灯された火は幻想的で神聖なものに感じてしまうのでしょうか。
岩が所々に顔を出したメコンの中流域を、スピードボートで下った恐い体験を懐かしく思い出しました。
2007年3月1日
これは実際に見に行きたいですね。
本当にこのようなチャンスに遭遇したのは凄いことですよ。
しかも、狙って行ってないし。
見に行きたいけど、そのためには仕事を辞めるか、引退してでないと無理だなあ。
なので、「彼の地への旅」では、期待してます。