2年ぶりのカオサン ~PENTAX K-7編~

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ラオスからバンコクに戻った、旅の最後の日。
バンコク滞在は短いし、ほかに行くところを知らないし。
気がついたら、空港からカオサン行きのバスに乗っていた。
またあの通りに行くつもりなのか。自嘲が込みあげる。


カオサンは、「ホテルカリフォルニア」のような存在なのかもしれない。
チェックアウトはいつでもできるが、決して去ることはできない。
旅行者であふれるこの通りに来るたびに、そんなことをぼんやりと考える。
ビールとパッタイを食べ、日が傾くとチャオプラヤーエクスプレスからワットアルンの
彼方に沈む夕陽を眺め、戻ってきたときには、色とりどりのネオンがきらめく夜の顔に。
そして通りには、さまざまな国籍の旅行者がひしめき、行き交う。

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初めてこの通りに投宿したのが、1997年。「カオサンプライバシー」という宿だった。
TVドラマの『深夜特急』で沢木耕太郎役の大沢たかおがこの宿に泊まったから、という、
今考えれば単純かつ素朴な理由で。それだけ不安が大きかったのだ。

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あれからはや13年。そのカオサンプライバシーも今はもうないようだし(名前が変わった
だけとも聞くが、場所を忘れてしまったので確認できていない)、その後に定宿にしていた
「D&D INN」はプール付きの中級ホテルに変貌してしまった。

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お洒落な店もますます増えている。2年前のマレー半島北上旅の最後に泊まったときも
その変貌ぶりに驚きを隠せなかったが(過去記事「7年ぶりのカオサン II」参照)、
わずか2年後の2010年初頭にあっても、変化は如実に表れていた。かつての、にぎやかさの
中に漂っていた場末的、退廃的な空気や匂いといったものは、路地裏の一画に追いやられ
てしまったかのようだ。

もちろん、そんなことはある程度予想はしていた。それでもなお、ここに来てしまう。
幸か不幸か、ここを初めてのアジア旅の出発点としてしまったがゆえに。
その強烈な原体験をまだ引きずったままでいる。
いつになったら、この通りから卒業できるのだろう。
ここから抜け出せる日は、はたして来るのだろうか。

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まあ、今回は「Mr. Thailand」おじさんを初めて目撃できたのでよしとしよう・・・。

カオサンの変貌ぶりに呼応するかのように、ぼくも、これまでいつも携えていたフィルム一眼レフは家に残し、初めてデジタル一眼(K-7)を持って旅に出た。これは、ぼくには一種の不安な賭けでもあり、劇的な変化でもあった。その賭けは当たりでもあり、外れでもあったし、その変化は撮影シーンによってよいとも感じたし、不満だとも感じた。

夜のカオサンは、感度を上げることができるデジタルの便利さを実感したシーンの典型だった。感度を上げれば、闇も明るく撮れる。でも果たしてそれでいいのだろうか。デジタルでは「闇」は写せない。かつて某写真家がそんなことを言っていたのを思い出す。あるいはそう実感したのは、カオサンから「闇」が失われつつあることの裏返しに過ぎないのかもしれない。

20件のコメント

  1. あづま川
    2010年1月17日

    >こいけさん
    お久しぶりです。
    昨年は某駅でお会いすることができなくて残念でした。
    今はそっち方面に行く機会がないのです・・・。
    今年もよろしくお願いします。いい一年になりますように。

    返信
  2. あづま川
    2010年1月17日

    >サミーさん
    あけましておめでとうございます。
    年始からあの熱気に身を浸してしまったせいで、
    いまだに浮遊感が身体から抜けません。
    その裏に虚脱感と寂寥感を含んでいるところが、正月ボケ
    とは少し違いますね。
    見たままを表現できるのはいいのですが、それだけなら
    デジタルって味気ないよなーと思ってしまいます。
    フィルム的な味付けをこれから試していこうと思ってます。

    返信
  3. こいけ
    2010年1月16日

    あけましておめでとうございます。
    今年も素敵な写真を撮り続けていってくださいね。
    楽しみにしています。

    返信
  4. サミー
    2010年1月16日

    半月遅れですが(笑)、あけましておめでとうございます。
    新年を迎えたカオサンはいつもどおり以上に人々の犇き具合の濃さを感じますね。
    ネオンの煌きは年中変わらずも、日中から日没後までを切り取った作品の数々は一種のカオサン・ストーリーを感じます。あの雑踏に戻りたくなるような(笑)。
    暗くなってからも撮れてしまうデジイチには自分も便利さは痛感するも、古い価値観を引き出せば何となく、撮れ過ぎてしまう事に対して思うことも少なからずありますが、見たままの世界をこうして表現できるのだから、これが進化した常識なんでしょうね。

    返信
  5. あづま川
    2010年1月16日

    >ジーエルさん
    デジタルは感度を変えられるんで、暗いところでも
    明るく撮れちゃいます。なにもかも露わにして
    しまう。デジタル放送で、女優の小じわまで鮮明に
    映ってしまうときと同じ興ざめ感を覚えます(笑
    ボケを生かした写真を撮るなら一眼ですよね。
    ぜひ使ってあげてください。ぼくも今度の旅までに
    自分好みの画が撮れるように、あるいは撮れるのか
    どうか、いろいろ試してみなければと思ってます。

    返信
  6. あづま川
    2010年1月16日

    >tk-cafeさん
    あけましておめでとうございます。
    カオサンはイヤな部分もたくさんあるのですが、バンコクに
    行くとなぜかあそこに足が向いてしまう(笑
    あの熱気とざわめきは、ほかでは体験できませんからね。
    タイに行きたい病、わかります。特にこんな寒い季節なら
    なおさら。ぼくもすぐに戻りたいです、できることなら。

    返信
  7. あづま川
    2010年1月16日

    >ナオさん
    Mr. Thailand は2年くらい前からカオサンに出現するように
    なったみたいです。だから実際に見たのは2年ぶりに訪れた
    今回が初めて。
    ぼくもあと10年早くバンコク、そしてアジアを旅していれば、と
    悔やむことたびたびです。こればっかりはどうにもなりませんけどね。

    返信
  8. ジーエル
    2010年1月15日

    変化を見続けるっていうのは、なかなかやめられませんね。
    街の見た目だけではなく、そこにいる人たちの変化も。
    タイは全然知らないのですが。。。
    ところで、最近のデジカメ高性能すぎるんですかね?
    何でも感じとって記録しちゃう。
    低性能セレクトボタンとかいうのがあれば(笑)。。。
    このエントリーを見て、古目の低性能コンパクトデジカメを
    工夫して使い続けてみようかと思いました。ただ、コンパク
    トは奥行きのある写真が撮りにくいのでそこがちょっと。。。
    実は、一眼回帰熱が少しだけ出て、去年”超”エントリータイ
    プのデジ一を手に入れたのですが、、、ほとんど使っていま
    せん。少し活躍の場を与えてやらなければと思ってます。

    返信
  9. tk-cafe
    2010年1月15日

    あけましておめでとうございます。
    ちょうどタイに行きたい病に駆られてる時にカオサンの写真を
    見てしまいどうにもならない状況ですw
    カオサンは行くたびに何かしら変わってますよね。
    初めて行ったのは2003年でしたが行くたびに、また変わってる
    な~と思いました。
    ゴチャゴチャしてチャラい日本人とかがいたりして何となくむかつ
    く事が多いのになぜか向かってしまう場所、それがカオサンなのだと思います。

    返信
  10. ナオ
    2010年1月14日

    あのひと Mr. Thailand っていうんですか。私も見たんですけど、何せ初タイだったものですから、これがフツーなのかと思ってました。そうですか、有名なんですか・・
    私は今のカオサンしか知らないので、昔を知ってるひとをうらやましく思います。生まれるのが遅かったなあと思うことしきりです。

    返信
  11. あづま川
    2010年1月13日

    >soraさん
    そう、まさしく「見た目そのまま」なんですよ。
    でもそれをもって、「空気感がよく出ている」とは言えない
    気がするんです。単にぼくがデジイチの画に慣れていない
    からなのでしょうか。
    闇を撮るんだったらモノクロですね。同じシーンを、コンパクト
    のフィルムカメラにモノクロを詰めて撮ってきました。今現像中です。
    こちらはどんな感じで写っているか・・・。

    返信
  12. あづま川
    2010年1月13日

    >vinvivaさん
    夜の撮影には感度を上げられるデジタルが便利ですね。
    とはいえ、明るい画に違和感を覚えるのも事実です。
    同じようなシーンで、もう少しいろいろ試してみたいです。

    返信
  13. あづま川
    2010年1月13日

    >眞紀さん
    10年前に比べたらネオンも増え、色もデザインもお洒落に
    なりました。
    伊豆ですか。ここからだと遠すぎて何十年も言ってませんが、
    そのうち自転車でも積んで行ってみたいですね。
    風邪が悪化したためこのあとすぐ寝るので、回復したら読ませてもらいます。

    返信
  14. sora
    2010年1月13日

    やっぱデジだと、「見た目そのまんま」が写るって感じがしますよね。
    今回も今までとはちょっと違うテイスト。
    でも、僕は今回の写真のほうが好きですねー。
    やっぱりデジ人間なんですかね。
    K-xではクロスプロセスモードっていうのが目玉機能としてあって、これはフィルムっぽい雰囲気で気に入っています。
    闇を撮れないかぁ・・・デジしか知らない僕には到達できない領域です。多分。MZ-5nで初めてイルフォードを使って、明らかに何か違う・・・と思ったのが闇、影の違いだったのか・・・

    返信
  15. vinviva
    2010年1月12日

    >なんと、活気のある街なんでしょう!
    活き活きとした感じが、旅心を擽りますね。
    でも、腰は重いのですが、、、、
    また、K7の影響か発色も綺麗ですね。

    返信
  16. 三谷眞紀
    2010年1月12日

    うむむむむむ!
    すばらしい!ステキ!
    はるか昔の学生時代に滞在していたカオサンと、似て非なる場所?(なんか、圧倒的に色彩豊富になってる……)
    それでもやっぱりカオサンらしいです。
    いいとこだよね。ベタだけど私も大好き。
    先日、伊豆の杉本博司展に行ってきました。
    銀塩終焉のこの時代につきつけてきた、巨人からのメッセージをビリビリ受け取りましたよ。
    ドライブがてらに是非。
    http://apakaba.exblog.jp/13467026/
    マジレビューも読んでねん。

    返信
  17. あづま川
    2010年1月11日

    >cho_dadadaさん
    そうそう、一種の儀式というか、通過儀礼というか。
    あそこに来てはじめて旅の始まりや終わりを実感できるというか。
    そういえば、カオサンのチャオプラヤー船乗り場には
    電光掲示板が設置されていてびっくりしました。
    一応サブとしてコンパクトのフィルムカメラを持って行きましたが、
    一眼はK-7だけ。だだださんも次回はNIKONといっしょにラオス、ですねー。

    返信
  18. あづま川
    2010年1月11日

    >sindbad_7さん
    こちらこそご無沙汰しております。
    昔のカオサンをご存知なのでしたら、今訪れたら
    変わり様にびっくりすると思います。アジアの変化の
    ペースはすごいですね。
    エジプトはいかがでしょうか。
    今年もカイロから発信される写真を楽しみにしています。

    返信
  19. cho_dadada
    2010年1月11日

    私も同じく、ここをアジア旅の出発としてしまったのでそれが原体験になっちまってるんですよね。困ったことで。こんなところ泊まらなくてもいいだろうって思いながら、旅の儀式のように滞在してしまう。
    チャオプラヤーエクスプレスが近いっていう利点はあるんですが・・・
    ちなみに今回はデジイチのみだったんですかー!思い切りましたね!

    返信
  20. sindbad_7
    2010年1月11日

    お久しぶりです。
    カオサンとても懐かしいです。最後に行ったのが十数年前なので、かなり変ったんでしょうね。
    ホテルカリフォルニア、なんともピッタリです。
    今年もあずま川さんのブログ更新を楽しみにしています。

    返信

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