この10年間、いっしょに各地を旅し、スタンプが押されるたびに履歴が刻み込まれていったパスポート。それなりに愛着も湧いていたそんなパスポートも、今年の秋についに期限切れを迎える。空白ページも残りわずかとなった。ということで、先日、更新手続きを行い、新しいパスポートを受け取ってきた。これで4冊目となる、旅の新しいパートナーである。
10年ぶりの更新を機会に、1冊目と2冊目のパスポートをごそごそ探しだし、失効したばかりの3冊目と並べて、ページをぱらぱらめくってみた。うーん、懐かしい。若々しい自分の写真も懐かしい、というかとても恥ずかしいのだけど(笑、なにより、各ページに押されたさまざまな形のスタンプを見ていると、これまでの自分の旅の軌跡と、それを取り巻く世界情勢の移り変わりが浮かび上がってきて、懐かしさが込みあげてくる。そこで、過去3冊のパスポートの中から、印象的なスタンプをピックアップしてみた。
まず1冊目。人生初のパスポートに最初に押された記念すべきスタンプは、上の写真のとおり、フランスの観光ビザである。え、フランスはビザが必要だったの? と驚く人がほとんどだろう。もう記憶はすっかり霧の彼方なのだけど、確か大事件が発生したかなにかで、その当時だけ、短期の観光であってもビザの取得が必要とされていたのである。やむなくフランス大使館に出かけると、申請者の長蛇の列。当たり前だ。ただでさえ観光客が多い国、おまけにぼくを含めた大学生は春休みの最中。そのうえ、時代はバブル絶頂期へと突き進んでいたのだから。
ちなみに、この最初の旅は、ギリシャからイタリア、ドイツ、フランスなどを通ってイギリスのエジンバラへという南北縦断ルートだった。
そして2冊目。このパスポートにも、今は存在しないビザがいくつか。
左はチェコの観光ビザ、右はハンガリーの観光ビザ。
前者はベルリンで、後者はウイーンで取得した。
1冊目と2冊目の間には、ソ連解体、ベルリンの壁崩壊という歴史的事件が横たわっている。そして日本では、バブルがはじけた。ぼくが会社を辞めて留学と旅をしていたのがこの2冊目のパスポートの期間で、その意味では個人的にも大きな転機となった時代である。そんな転換期に訪れようとしていたチェコとハンガリーには、しかし依然として「東側」的な融通のなさも残っており、ビザの取得もその名残であった。が、のちに両国とも一定期間内の観光であればビザ不要となった。ということで、この2つのビザも大切な記念・記録である。
一回り小型になった3冊目。このパスポートに初めて押されたのは、インドのビザである(写真の右頁、左頁はネパール)。ヨーロッパ指向だったぼくがアジアに目を向け始めたのがちょうどこの頃で、「初めてのアジアなら、やっぱりこの国しかないだろ」と意気込んで訪れたのが、ほかならぬインドだった。いきなりインド、である。もちろん、散々負けて帰ってきた。ボラレまくったし、下痢もしたし、人間不信にも陥った。しかし、最初に強烈な通過儀礼を経たおかげで、あとの旅がとっても楽になった。それからというもの、旅先はアジアとイスラム圏が中心になっていった……。
そして、ぴっかぴかの4冊目。いろいろ考えた末、5年有効のパスポートを取得した。初めてのブルーパスポート。ICチップまで埋め込まれている最新版である。この真新しいパスポートに初めて押されるのは、果たしてどの国のスタンプなのだろう。そして、このパスポートといっしょに、これからどんな旅の軌跡が描かれていくのだろう……。
じつは、最初のスタンプについてはほぼ決定している。そろそろビザを申請しないと。
2008年1月3日
>バックオーライさん
はじめまして。
いや、このシールは入国ビザです。
出国はふつうのスタンプだったと思いますよ。
って書いて写真を見たら、Departureってシール貼られてますね・・・。
10年前の旅なので記憶が定かではありませんが。
現在はどうなんでしょうね。
2008年1月1日
はじめまして。
ネパールって出国スタンプ、シール式なんですか??
ちなみに入国は無しなんでしぃか??
2007年4月12日
>ERICAさん
そう、この時期だけビザが必要だったのですよ。
いまとなっては貴重なスタンプかも。
インドはやっぱり手強かったです。
でもそれもいまとなっては懐かしい思い出です。
また訪れないとね。
2007年4月11日
フランスへ行かれた当時は観光ビザが必要だった? 初めて知りました。
バリもテロ後、ビザが必要になったので同じようなことがあったのでしょうか?
初アジアの体験は、読み手には「かなり面白く」感じられました!
あづま川さんが「惨敗」したなんて・・・信じられない(驚)
新しいパスポートに真新しいスタンプも楽しみですね~
2007年4月5日
>amber_b.さん
はい、まさしくそのあたりのエリアです。
Gastro Pubですか。パブも変化しているのですねー。
ホント、そろそろ再訪したいです。
Geotagも活用してみますね。
2007年4月5日
丁寧なお返事ありがとう。Sussexだったら、カンタベリー、ヘイスティングす、フォークストン、ブライトンなどを回られたのかしら。あのへんだったら、パブはシェパーズ・ニームのテリトリーでしょうか。最近は昔のパブをシェフが買い取ってスタイリッシュなブラッセリーにしている、いわゆるGastro Pubが流行ってます。
私のFlickrの写真(特にイギリスの田舎)はGeotagがついてますので、今後の参考にしてください。
2007年4月5日
>amber_b.さん
同じようにがさごそ引っ張り出してくれてありがとうございます!
写真とは違い、ビザを見ていると旅立ち前や入国時の
ワクワク・ドキドキ感がまざまざと蘇ってきます。
ネパールの粗末なビザ、どんなんだろう。見てみたいです。
ぼくはイーストサセックスの学校に通ってたのでその周辺はけっこう
回ったのですが、あの海岸は知りませんでした。セブンシスターズとかには行きましたが・・・。
再訪の際はぜひ情報を教えてください。とくに地ビール情報など・・・あーパブ巡りしたい。
2007年4月5日
パスポートのスタンプというのは写真とまた違って生々しい記憶を喚起する作用があるようですね。思わず私もたんすの奥から4冊のパスポートを引っ張りだして見てしまいました。カラーのでかいスタンプを押してくれるのって嬉しいですよね。チェコのすてき。私のインドのスタンプはもっと小型。ネパールのビザはどこの田舎の印刷屋でも刷れそうな粗末なものでしたけど、写真のは地模様入っていて改良の跡がみられます。
イギリス再訪の折はお勧めの地が沢山ありますので、(パブも)ご連絡くださいね。
2007年4月5日
>野良さん
はじめまして。
同世代の方からの書き込み、うれしいです。
あれは爆弾テロでしたか。すっかり忘れてました。
とにかく急にビザが必要になって、ぶつくさ言いながら
ビザを申請しに行った記憶だけはあります。
野良さんもいろいろ苦労したようですが、今思えば懐かしい
思い出なのではないでしょうか。もしかしたら
どこかの街ですれ違ってたかもしれませんね。
名前の件はお気になさらずに。
これからもよろしくお願いします。
2007年4月4日
すみません。
お名前を間違えてました。
あずま川さんではなく、あづま川さんでした。
大変に失礼しました。
2007年4月4日
はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいております。あずま川さんの文章を読みながら、あずま川さんはわたしと同世代では?と思っていましたが、今回、そうであることがわかりました。
フランスのビザの件、よく覚えています。確か、その年のはじめにパリで爆弾テロ(その頃は先進国でのテロは珍しかったような気がします)があったのが原因だったと思います。当時、わたしはヨーロッパへの出発3日前にそのことを知りました(そのときにはすでに手遅れでビザ取得までに1週間が必要でした)。ビザがないまま出発したためにヨーロッパについてからずいぶんと苦労しました。旅さきでもビザがないために電車に乗れなったとか、パリ行きの航空券をもっているにもかかわらず、ロンドン行きに変更させられたとかという話で盛り上がったときでした。なつかしいですね。
これからもお邪魔させていただきたいと思っております。話の途中にたまに出てくる文学話も楽しませてもらっています。
2007年4月3日
>soraさん
そうですね。昔はスタンプを集めるために
ヨーロッパを回りまくる旅行者もいたようですから。
それと各国のコインを集めるのも楽しかったし。
その意味では、現在の欧州の旅は便利になった半面、味気なくもなった気がします。
仏像研究家でしたか! 朱印帳もいい思い出になりそうですね。
そのときの光景や空気が蘇ってくるのでしょうね。
2007年4月3日
こういうスタンプってなんだかワクワクしますね。子供の頃のスタンプラリーを思い出します。
ちょっと話は違いますが、仏像研究家(自称)の私は神社、お寺を巡るときは必ず、朱印帳に朱印を頂きます。もう結構な数になっているのですが、過去に辿った朱印を眺めるとニンマリとします。
お寺によってはスッゴイ達筆もあれば、ハンコをペタペタ押しただけの朱印もあったりしますが・・・。
2007年4月2日
>ハナミズキさん
チェコのビザ、好きです。お気に入りです。
あか抜けないんだけどカッコイイ、まさしく東欧のデザインです。
ありがとうございます。次の5年間も楽しく旅がしたいものです、お互いに。
>HARUさん
インドではやられまくりました。その後バスでネパールのポカラに
たどり着いたときには、ここは天国かと思いました(笑
負けたと書きましたが、それがそのときの等身大の自分。
その生身の自分がさらけ出され、跳ね返ってきただけなんですよね。
今訪れたら、自分はどう感じ、どう対応するのか、興味はあります。
2007年4月1日
>puchioさん
大きいヤツを見たことないというのは、若さの証明ってことで(笑
puchioさんもブルーの5年もんなのですね。
ぼくにとってブルーのパスポートはとても新鮮です。
彼の国のビザはやっぱり日本で申請して押してもらおうと思います。
>ぴおさん
インドのビザはシールになっていたとは。
そのビザ、新しいパスポートにぜひ欲しいです。
欲しいということは行かなきゃダメってことなんだけど。
実際、次の旅先、最後まで彼の国かインドかで迷ってたんですよね。
インドネシアはぼくも2度目の時に立派なのを貼られました。
あと3ページって、大丈夫ですか?
少なくともイエメン用に1ページ残しておかないと。
あとはインド用のページと、その他ビザ不要国用のページ、まあそんなところでしょう(笑
>とんびさん
そうなんです、ぼくもフランスビザを久しぶりに見て思い出しました。
その原因までは覚えていないのですが。
チェコのビザはデザインが「東欧」って感じでいいですよね。
ベルリンのチェコ大使館で取得したのですが、そんな手間もいい思い出です。
5年用にしたのは、おっしゃるとおり、スタンプが多くなりそう
(あるいはそうあって欲しい)と予測したからです。
ブルーのパスポートいうのはとても新鮮で、なんだか初心に
戻ったような気分でドキドキしています。
2007年4月1日
パスポートを眺めて、旅の足跡を振り返るのっていいもですよね。
インドの旅で、「散々負けて帰ってきた」という表現が何とも微笑ましい(失礼!)。
僕が知っている中でも、インドは最も気合いのいる国だったから。
でもそれだけ自分にも返ってくる、歯ごたえのある国ですよね。
あづま川さんのこのレビューをまねた記事を、そのうち自分もブログで書いてみようかな、と思いました(笑)。
2007年4月1日
チェコのビザ、とてもきれいですね。東欧のビザってどことなく共通点があるように思います。
最近はビザがいる国も減ってきて、なんだか寂しいなあ。
新しいパスポートも楽しい旅の思い出で埋まりますように。
2007年3月31日
フランスビザ要った時期あったなぁと思い出しました。自分が海外旅行に行きだす少し前です。過激派対策だったように思います。この措置は1年くらいで解除されましたね。
チェコのビザってこんなのだったのですね。自分は、チェコのビザが不要になって、2日目か3日目くらいに行きました。いつから不要に何度も調べた覚えがあります。今にして思えば、ビザがあったほうが想い出になるなぁって、、
自分の場合は、中国とベトナムのビザが今は不要になっていますね。中国のは、スタンプのとシールのと深せん専用のと3種類あります。
今回、5年用にされたのは、ビザやスタンプが多いためでしょうか。自分も10年用のが、もつかどうか心配な状態で、ビザの要る国は避ける傾向がでています。
2007年3月31日
こんばんは。
へ~、インドのビザって、この頃はスタンプだったんですか。
去年取った私のはシールでした~。淡い色調に、インドの国旗の模様が地紋で入り、名前の欄は金の玉虫色。けっこう凝ってます。
かつての要ビザ国として挙げられているチェコは、私はほビザ不要になってから行ってますね。ビザ不要になったから行った、と言ってもいいかも。当時はビザ取得って、ものすごく面倒なことだと思ってたので。
フランスのビザは、前に友人のパスポートで見たことがありますが、要ビザだったのは一時的だったんですか?その友人と「けっこう最近まで要ビザだったんだね~」と言ってたんですが、取得した本人も知らなかったのか(^_^;)。
私のこれまでのパスポートにビザのある国で、今不要になってるのは、中国ですね。オーストラリアも、今も不要じゃないと思ったけど、簡略化されましたね。逆に初回いらなかったのに3度目で必要になったのがインドネシア。
そういえば、私のパスポート来年の12月までなのですが、白紙のページがあと3ページ。微妙...。
2007年3月31日
ちょっと大きいやつ、初めて見ました。(^^;
私も昨年秋に新しいのに切り替わって、ICチップ入りの5年もんです。
一番のりはネパールでした~。