今夜はここで結婚式があるよ。
ひょんなことから知り合いになったイエメンの男が、サナア旧市街を案内してくれている最中、ぼくに耳寄りな情報を教えてくれた。今日は木曜日。金曜日が休日であるイエメンでは、その前夜、つまり今夜から各所で結婚式が盛大に催される。サナアの旧市街では、路地裏の広場がパーティーの会場となり、旅行者も見学できるというのだ。その夜、新市街で夕食をすませると、旧市街にあるその場所に行ってみることにした。
教えられた広場へと向かう途中、どこか違う方向から、歌声と演奏が漏れ響いてくる。別の場所でも結婚式が行われているようだ。その音に惹かれ、その音を伝うように、薄暗い路地を何度か折れてみる。
突然、目の前に光の群れが出現した。
頭上にはコードが張り巡らされ、いくつもの裸電球がつり下げられている。
真下の広場と周囲の建物をやさしく照らし出し、ロマンティックな雰囲気で満たしている。
どうやらここが会場らしい。
入ろうとすると、少年がシャーイ(ミルクティー)をふるまってくれる。
ありがたく受け取って、路地の奥へ。
大勢の観衆に囲まれて、すでに男たちが祝いの踊りを披露している。
かたわらでは、楽師が高らかに歌い上げ、演奏する。スピーカーから、その声と旋律が響き渡る。高い建物に囲まれた広場は、格好のホールにもなる。
迷惑だ、なんて文句を言う近所の住人なんていないのだろう。
イエメンでは、花嫁と花婿を別々に祝う。いま催されているのは、花婿の結婚パーティー。
花嫁のパーティーは、おそらく花嫁の実家で女性だけで催されているに違いない。みんな派手派手な衣装で踊りまくるそうなのだけど、残念ながら男はそれを見ることができない。けれども、遠くから踊りを眺めていた女の子たちの姿から、なんとなく想像はできそうだ。
踊りの合間に、記念撮影。
花婿が、親戚や近所の人から祝福を受ける。その様子を遠くから撮っていると、隣のおじさんが、もっと近くで撮れ、と気をつかってくれ、輪の中に通してくれた。
写真右側、剣を持っているのが花婿さん
