2009年の暮れは、南ラオスのドンデッドのバンガローに滞在していた。
何にもせず、ただメコンを眺め、ハンモックに揺られながら行く年を静かに振り返り、新たな年をゆるやかに迎える。そんな心づもりでこの小島に来たのだが、同宿の日本人から、31日の夜にはカウントダウンパーティーがあるみたいだぜという話を聞いたとき、ちょっぴり食指を動かされた。
大晦日、いつもの食堂で朝食をすませ、ぶらぶら散歩していると、噂のカウントダウンパーティーを告げる看板を見つけた。へぇー本当に開かれるんだ。「ビアラオプレゼンツ」なんてウソがいかにも本当っぽく書いてあるのには笑ってしまうけれど、ひょっとしたら、本当に大判振る舞いでビアラオ飲み放題だったりするのかも、今宵はビーチにビアラオの雨が降り注ぐのかも、とちょっぴり期待も抱かせ、ますます食指が動いた。
会場の「The BEACH」、じつは単なる中州・・・
折しも、大晦日の今宵は、満月。思えば、数か月前の3月11日。南インドのゴアで迎えたホーリーも満月だった。しかしその夜は、アンジュナのビーチでは何も起こらなかった。正確に言えば、何も起こる気配がなくて、日が沈む前にハンピ行きのバスに乗り込んだのだった。ゴアでかなわなかった分、この島でパーティーを楽しむのもいいかもしれない。色粉の代わりにビアラオを掛け合うのも楽しそう。というわけで、2009年最後のサンセットを眺めた後、同宿の日本人といっしょに繰り出すことにした。
会場のビーチに到着。数十メートル四方の小さい中州をビーチとは言わない気もするけれど、とりあえずビーチとしておこう。まずはそのビーチを見下ろすレストランで夕食。レストランはほぼ満席なのに、肝心のビーチはというと、スピーカーから音楽はがんがん鳴っているのだけど、笛吹けど踊らず状態で、盛り上がりに欠ける。11時を過ぎた頃からようやく人が集まり出した。ぼくたちも店を出てビーチへ。
0時が近づくにつれ、ちょっとずつ盛り上がる。でも全体的なテンションは低め。
でもさー、こんなテンションゆるいところがドンデッドに来る旅人らしさなのかもね、盛り上がり好きの旅人なら、ここを去って、シェムリかビエンチャンに流れちゃってるに違いないよね、などと話しているうちに、いよいよカウントダウン。そして、2010年に。
ちょっぴり期待してたビアラオ飲み放題はやっぱりなかった。その代わり、よくわからないお酒を飲んでしまって、カウントダウン後は記憶がおぼろげ。何時頃、どうやってバンガローに戻ったかもあまり覚えていない。
気がつくと、開け放ったままの窓から明るい光が射し込んでいた。さわやかな風が蚊帳を通して吹き込んできて、頬をなでる。椰子の木がざわめている。鶏のかん高い鳴き声がときおり響き渡る。
2010年最初の朝は、どこまでもゆるい空気と、心地よいまどろみと、ちょっぴりガンガンする頭の彼方からやってきた。
ここで訂正。過去記事で、「2010年の初日の出はメコンで迎えた」と書いたけれど、あれは思い違いで、このとおり元旦は寝過ごしたのだった……。でも1月2日はちゃんと早起きして朝陽を眺めたよ。