ラオス:オークパンサー(2)

人と光と音の波に運ばれて、気がつけば、メコンを見下ろせる場所にたどり着いていた。
灯と花で飾られた船が、大勢の人に担がれて、順々に岸辺へと下りていく。
メコンに流すのだ。
この船は巨大な灯籠なのか。灯籠流しのお祭りだったのだ。

船は一艘ずつ、メコンに浮かべられ、放たれていく。
すぐに転覆してしまう船があるのも、ご愛敬。
そのたびに、歓声と悲鳴と笑いが湧き上がる。

そんな熱気も届かない彼方では、ろうそくの火がたゆたいながら、列をなして流れていく。
闇が濃くて川面は見えない。まるであちら側は黄泉の国のようだ。
現世と来世を、漆黒の流れが隔てている。
その闇の川を、大小いくつもの灯籠がゆらめき、運ばれていく。

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目の前で、小さな灯籠に火がともされる。
南国の花と葉で飾られている。

そっと、メコンに放たれる。

どのような祈りが運ばれていくのか。どのような願いがこの灯に宿っているのか。
なにもわからないぼくは、ゆらゆらと彼方へと去っていく灯籠を、黙って見送った。
運良くこのような熱気と幻想あふれるお祭りに巡り会えた。
旅の神様への感謝の思いだけを、いっしょに乗せてもらうことにして。

雨期の終わり。そんな微妙な時期にラオスを訪れる機会に恵まれたのは、
偶然ではなかったのだ、と。

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ラオス:オークパンサー(1)

日もとっぷりと暮れた7時半。7、8人の宿泊者たちと一緒に「コールドリバー・ゲストハウス」を後にした。
今夜は大きいお祭りがあるというので、みんなして見物に行こうというのだ。
ゲストハウスの看板娘、ニニちゃんに案内されて、シーサワンウォン通りを目指す。

プーシーの丘を迂回するように大きく弧を描く真っ暗な夜道を、ぞろぞろ歩いていく。カーン川を渡れば、目抜き通りまであとわずか。その直前の坂道を途中まで上ったところで、みないっせいに声にならない驚きの声を上げた。

この時間にはすでにひっそりと静まりかえっているはずのシーサワンウォン通りが、きらびやかな光と華やかな歓声であふれている。その光と音の渦の中を、人の波が途切れなく流れている。

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