ロンボクで眺めたサザンクロス

ギリ・アイルで見たかったもの。
どこまでも透明な海、澄み切った青空、鮮やかなサンセットとサンライズ、
そして、満天の星空。なかでも、南天のシンボル、南十字は絶対に見たかった。
見るだけでなく、写真にも収めてみたい。

小さい頃から星を眺めるのが好きだった。高校時代は天文部に所属していたほど星に熱中していた。ロマンティストなのは、何も今に始まったことではないのだ(笑 そんな星好きであった自分も、悲しいかな、年を重ねるにつれ、夜空を見上げる時間も、星空にカメラを向ける機会もめっきり減ってしまった。その罪滅ぼしというわけでもないけれど、今回の旅では、天文部時代の愛機だったニコンFEを持っていくことにした。電池なしでバルブ撮影できるから、星を写すにはもってこいだ。

星を写すといっても、固定撮影ならとくに難しくもない。用意するものは、カメラ(マニュアル一眼レフが便利)、三脚、レリーズ、フィルム。あとは星図とライトくらいか。三脚にカメラを固定し、撮りたい星空にレンズを向け、シャッター速度をバルブ(B)にセットし、レリーズを使って適当な時間シャッターを開けっぱなしにしておくだけだ。

いくら輝いているとはいえ、被写体は彼方の星たち。レンズはできるだけ明るいものを。単焦点が望ましい。そこで用意したレンズは、24mm/F2.8と35mm/F2の二本。絞りは開放か半段絞ったくらいで。ピントを無限遠にセットするのも忘れずに。フィルムは高感度のものを。今回使ったのは、CENTURIA800。

というわけで、久しぶりに撮ってみた星の写真。結果はご覧の通り、椰子の木を取り込んだ南国らしい星野写真になった。

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上の写真の露出時間は、およそ5分間。星は東から西に動いているので、固定撮影だと弧を描くように写る。

で、肝心の南十字だけど、みなさん、どれだかわかりますか?
わからない方は、次の写真を参考に。ちっちゃくて目立たないけれど、一度見つけてしまえば、「なるほどねぇー」とうなづくことうけあいだ。ちなみに、下の写真の露出はおよそ45秒。このくらい短時間ならば星も点状に写ってくれる。天の川だってしっかり写るのだ。

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キャパ・イン・カラー

2/15から日本橋三越で開催中の「ロバート・キャパ写真展 キャパ・イン・カラー」に足を運んできた。最近発見された第二次世界大戦のカラースライド写真のほか、作家ヘミングウェイの家族の写真や、1954年の来日時に撮影した京都や大阪の写真などを展示したものだ。

僕は写真を撮るのは好きだけれど、およそカメラやフィルムの成り立ちやら歴史やらについてはまったく無知なうえ、興味もさほどない。カラースライド写真が第二次世界大戦前から存在していたことすら恥ずかしながら今回初めて知った。世界最初のカラーフィルムが発売されたのは1935年のことだそうだ。コダックの「コダクローム」がそれである。今回展示されているのは、キャパがそのコダクロームで撮ったスライド写真。最近になってマグナムのニューヨークオフィスからマウント形式で大量に発見されたものをスキャンし、プリントしたものだという。そのあたりの経緯についてはここの記事が詳しい。

会場に到着したのは午後1時過ぎ。平日なのに会場内には大勢の人。前評判の高さをうかがわせた。
ずらりと並んだ第二次大戦の写真を見てまず感じたのは、「これが本当に60年前に撮られた写真なの?」という素直な驚き。頭の中に漠然とある、古ぼけたモノトーンの場面が、突如、色鮮やかなカラーの世界として目の前にリアルに展開される。とりわけ、空の青が印象的だ。いっときのくつろぎを楽しむ水兵や出撃を待つ操縦士の背後に広がっている空は、悲しすぎるほど青い。その青が鮮やかであるがゆえに、彼らが辿るであろう運命のはかなさが、モノクロ写真を見るより生々しく胸に迫り、やるせない気持ちになる。

もっとも印象に残ったのは、1943年にチュニジアで撮られた仏軍ラクダ部隊の写真と、チュニジアからシチリアに向かう米軍輸送部隊の写真だ。なぜなら、僕自身が、昨年チュニジアからシチリアへと実際に旅したからだ。けれでも、旅の空の下でもっぱら思いを馳せていたのは、はるか遠い昔の、古代ローマとカルタゴの戦いのことであって、第二次大戦の出来事についてはまったく頭の中になかった。白い砂漠を進軍するラクダ部隊の写真を眺めたとき、チュニジアがたどってきた複雑な歴史のほんの一部しか見てこなかったことに思い至り、歴史認識の浅さを痛感した。

戦争写真のほかにも、ヘミングウェイがビール(?)をラッパ飲みしている写真や、京都の桂川で遊ぶ子供達の写真、地雷を踏んで亡くなる数分前に撮影した写真など、貴重なカラー写真が数多く公開されている。また、カラー以外にも、「倒れる兵士」などの傑作モノクロ写真も展示されている。時間があればぜひ足を運んでみてください。

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