尾道とポルトガルとマカオと

一昨日の日曜日は、『ヴィム&ドナータ ヴェンダース写真展 尾道への道』を見るために表参道ヒルズへ出かけた。

旅好きとして知られる映画監督ヴィム・ヴェンダースは、土地の持つ空気や色、音に対して非常にセンシティブであり、その鋭敏な感覚から、『パリ、テキサス』、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』、最新作の『アメリカ、家族のいる風景』など、世界の土地と人をテーマにした映画を世に送り出してきた。

また、彼は小津安二郎の熱心なファンとしても知られており、『東京物語』のロケ地である尾道は、彼にとっての憧憬の彼の地であったという。この写真展では、ヴェンダース夫妻が昨年その尾道を初めて訪れたときに撮った写真を見ることができる。

世界報道写真展2005ほか

今週は時間に余裕があったので、いくつかの写真展に足を運んできた。

●「世界報道写真展2005」
世界中のフォトジャーナリストを対象にした「世界報道写真コンテスト」への応募作品から、約200点を選んで展示したもの。

今年の大賞は、「スマトラ沖地震による津波で親族を亡くし嘆き悲しむ女性」。
この写真を初めて目にしたのは、たしか数ヶ月前の朝日新聞の一面でだったと思う。見た瞬間、「生理的に受け入れがたい」と思ったのを覚えているが、その感覚は、生で見たときも変わらなかった。両手を投げ出して悲嘆にくれている女性を見下ろすような突き放した撮り方にも、鮮やかなサリーをまとったその姿に一種の絵画的な「美」が見られることにも、あるいは、悲しみにくれているその女性に美を見いだしてしまう自分自身にも、許せない、嫌悪感のようなものを覚えてしまうからだ。このような撮り方は、決してしてはいけない。いけないなんていう言葉を安易に使ってはそれこそいけないのだけど、ぼくはこういう撮り方を肯定しない。たとえ報道写真だとしても、否、報道写真だからこそ。

その他の展示作品そのものの感想は置いておいて、ひとつよかった点は、キャプションが同量の英語と日本語で記載されていることだ。職業柄、どう訳されているか気になって、英語と日本語の解説を読み比べていったのだけど、とても素晴らしい訳だった。きっと優秀な翻訳者が訳したのだろう。プロの仕事だ。うーん、こんなところに勉強の材料があったとは。

会場:東京都写真美術館
会期:2005年7月31日(日)まで

ちなみに、明日からは世界文化遺産写真展「アンコールと生きる」が開催される。
アンコール遺跡群マニアとしては、こちらにも足を運ばねば。

●森山大道写真展「ブエノスアイレス」
2004年~2005年にわたってブエノスアイレスで撮影された作品集。

こちらも作品の感想は置いておくとして、会場で興味をひかれたのは、ブエノスアイレスでの撮影の様子を追いかけたビデオの上映。例のごとく、ショルダーバッグひとつで黙々と街を歩き回りながらGRでジージー写している。その姿は、妙に格好よくもあり、怪しげでもありで、しばし見入ってしまった。

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