【ポルトガル】レゲンゴスのワイン

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アレンテージョの平原の彼方に夕陽が沈んでいく。
やがて、沈黙の音色が……。

ポルトガルを旅している間、一冊の本を読んでいた。アントニオ・タブッキの『レクイエム』である。真夏のリスボンを彷徨う旅人の1日を描いた物語。ポルトガルが生んだ詩人、フェルナンド・ペソアへの文字通り鎮魂曲でもある。この本をしのばせてきたのは、同じタブッキの作品『インド夜想曲』と同様、「彷徨い感」をおおいに刺激してくれるのではと期待したから、さらには、リスボンの描写が詳しいことから、ガイドブック代わりにも使えるのではと考えたからだ。

念願のモンサラーシュにたどり着き、時間と心に余裕ができたこの日、『レクイエム』のページをめくってみた。読んでいくうちに驚いたのは、猛暑のリスボンが舞台であるにもかかわらず、アレンテージョ地方の話がしばしば、というより異常なくらい多く登場することだ。

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