ラオスで最後の夕日を眺めたのは、メコンのほとりではなく、
首都ビエンチャンの空港からだった。
およそ1時間後、ハノイに降り立ったときには、日はとっぷりと暮れていた。
空港からハノイの市街へ。人と、車と、スーパーカブの往来が激しさを増していく。
旧市街の狭い路地に割って入ると、喧噪と混沌はその極みに達する。
ゆるくて穏やかなラオスとのあまりの違いに面食らうが、ああ、この無秩序ぶりも、熱気も活気も、
たしかにアジアなのだなと、心の別の部分がざわめき始める。
宿を確保して、夜の旧市街を散策する。
歩道に沿って並ぶ屋台の1軒でフォーをすすり、ビアホイをグイッとやる。
喧噪と混沌のハノイ。けれども、魅惑の液体に包まれ、湿り気を帯びた空気と闇に
溶け込んでいく感覚は、ラオスにいるときとさほど変わりない。
ハノイ:フォーの味
ビアホイでほろ酔い加減になったら、
おばちゃんの作るフォーをすする。
ほろ苦い泡と思い出が、ひとすすりごとに、路地の闇に溶け去っていく。
肌にまとわりつく空気、舌にまとわりつくフォー。
うっとうしくも艶めかしい浮遊感。
ここでもまた、東南アジアの気体と液体におぼれる。
ハノイの夜は、まだまだ更けていく。