夜の旧市街で催される結婚式。
男たちがあるときは輪になって、あるときは一列になって、あるときはペアで、あるときは花婿も加わって、ともに祝う。一連の踊りに欠かせないのが、歌と演奏。
最初の会場(前回の記事を参照)では、キーボードとボーカルという、意外とシンプルで現代的な組み合わせ。ボーカルの二人はまだ少年の面影を色濃く残しているが、こぶしの利いた野太い声は堂に入ったものだ。
この結婚式を見終えたあと、本来行くはずだった結婚式の会場へと移動。下の写真は、その会場での踊りと演奏の風景。
こちらの式場では、伝統的な楽士たちが演奏していた。
中央にいるのは、ウード奏者。
ウードは日本の琵琶や西洋のリュート、ギターの原型となり、『千夜一夜物語』にも登場する由緒ある楽器。イエメンの結婚式でも生演奏にお目にかかる機会は減ってきているらしい。
ちなみに、歌手も伴奏者もすべてプロ。お金を払って一晩なり二晩なり雇うそうだ。きっと新郎側の出費もバカにならないはず。けれども、結婚式は単に一族のための行事にとどまらず、地域のお祭りという側面も強いから、あまりケチれないという事情もあるらしい。盛大に催すほど喜ばれるし、見栄も張れるし、体面も保てる。そのためには迫力ある生演奏が不可欠、ということなのかも。
こちらは別の夜に見学した結婚式の演奏風景。迫力満点。
伝統衣装のアラブおじさんと電子キーボードって、とってもミスマッチではある。でもその不可思議な光景が奇妙な迫力をもたらし、奏でられ、夜の広場を満たす独特の旋律が、異空間にいる自分というものを強く意識させてくれる。じつに楽しく、幻想的だ。