重たいカメラと大仰なズームレンズなど旅には必要ない。
そんな風に割り切れたらどんなにかいいだろう、そうありたいと考えるようになったのは5、6年前のことだ。何でもかんでも撮ろうとしないこと。軽いカメラと単焦点レンズで、目の前を通り過ぎる印象的な一瞬だけをさりげなく焼き付けよう。そう思って以来、小型軽量のPENTAX MZ-3とMZ-5n + 単焦点レンズを旅のメインカメラとして使ってきた。
むろん、軽量コンパクトだけを求めるのであれば、文字通りのコンパクトカメラやレンジファインダーのほうが選択肢として理にかなっているだろうし、実際にGR1vやGR21、BESSAなども愛用してはいるのだけど、「撮っている」という現実感と高揚感が最も得られるカメラはぼくにとってはまだ一眼レフ。これを旅のメインカメラの座から降ろすことは考えられない。といって重厚長大はいやだ。その落としどころにぴったりはまったのがPENTAXのMZシリーズだった。空気感を追究したリミテッドレンズをはじめ、軽量で優秀な単焦点レンズが揃っているのも魅力的だった。
実際に海外の街を歩くときには、気分に応じてMZ-3とMZ-5nのどちらかを持ち出し、どちらかを予備として部屋のバッグの奥に残しておくのが常だった。ブラックのMZ-5nにはシルバーの43mmを付けることが多かった。ブラックのMZ-3とシルバーの43mmリミテッドを愛用していた故・植田正治氏に倣ったもので、自分もこれならいいスナップをたくさん撮れる気になれた。もちろん、そういう気になっただけで、帰国後がっかりすることがほとんどではあったのだが、旅先スナップの楽しさを引き出してくれたことは確かだった。
が、ここにきて旅の一眼レフの選択について再び意識の変化が生じてきた。具体的には、デジタル一眼への部分移行を考えるようになった。その経緯や理由はここでは割愛するけれど、そんな変化の過程で、銀塩PENTAXは1台で十分ではないかと思うようになった。
ちょうどそんなところに、いつも交流させてもらっているブロガーさんのひとりがフィルムカメラに興味を抱いていることを知った。PENTAXのデジイチをきっかけにカメラにはまり、単焦点レンズに魅了され、フィルムの世界にも足を踏み入れたいと考えているようだ。フィルムからデジタルに向かおうとしているぼくとは方向は逆だけど、カメラとレンズの魅力にはまりこんでいる点では同じ。世代も同じだし、80s洋楽フリークという点も同じ。タイミングのよさに、こうした親近感も加わって、「MZ-5nでよければお譲りしますよ」と気がついたら声をかけていた。
その後、話はとんとんと進み、今月初旬、吉祥寺のとあるイタリアンレストランでブラックボディーのMZ-5nを手渡しすることができた。これも何かの縁というものなのだろう。ありがたいことに、さっそく使ってくださり、いい感じのモノクロをブログにアップしている。いい人の元にもらわれていったと思うとうれしいし、来年以降どのような写真を撮っていくのか、とても楽しみだ。
そしてぼく自身は、デジイチを横目でチラチラ見ながら、来年もしばらくはフィルム一眼レフを携えて旅に出ることになると思う。シルバーのMZ-3と単焦点2、3本をバッグにしのばせて。
今回は影ではなく、少しだけ露出度アップで。シャイなのでこれ以上は無理です!
カメラ話に加え、最後は自分の姿までさらしてしまい恐縮ですが、これを今年の締めの記事とします。
今年は春に住む場所を変え、夏には古いブログを閉じました。代わりに、新しい光景と出会い、新しく始めたこのブログでは新しい人との交流も芽生えました。
師走には親知らずを抜き、カメラも譲りました。代わりに、来年はどんな新たな出会いがあるのでしょうか。
みなさまのこの一年はいかがでしたか?
マイペースに拍車がかかり、旅行記もいっこうに進まない、そんなスローなブログではありましたが、にもかかわらず、いつも様子を見に訪れてくださったみなさま、一年間ありがとうございました。
それでは、どうぞよいお年をお迎えください。