【ポルトガル】エボラの郷土料理

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アレンテージョ地方の中心都市であり、ローマ時代から政治、商業、学問の拠点として栄えてきた古都エボラ。城壁に囲まれたその旧市街のへそに当たるジラルド広場から東へと路地を歩いていくと、やがて由緒ある大聖堂や、コリント式の円柱が並び立つディアナ神殿が目に飛び込んでくる。その隣には、市民の憩いの場となっている小さな公園がある。奥へと歩いていく。次第に北側の眺望が開けてくる。公園の先端にたどり着く。眼下には、エボラの白い町並み。その向こうでゆるやかに弧を描く丘陵までも一望できる。西の空では、オレンジ色の太陽がこの日最後の輝きを放って沈み行こうとしている。

アレンテージョ二日目の落日は、この小高い公園の傍らで静かに迎えた。
明日は、いよいよ首都リスボン。ちょうどあの太陽が落ちていく方向を目指す。

エボラで旅装を解いた宿は、旧市街の中心に位置するジラルド広場からやや奥まった路地にあった。夕日を見届けたぼくは、ジラルド広場を横切っていったん宿に戻ると、夕食のために再び外に出た。石畳の路地を広場の方へと歩き出してまもなく、こぢんまりとしたレストランの前を通り過ぎようとしてふと立ち止まった。日中はそれと気づかないほど目立たないたたずまいであったのに、日がとっぷりと暮れた今、ガラス越しにのぞいてみた店内は立錐の余地のないほどの賑わいを見せていた。ほとんどが地元の客だろうか。ほのかな照明の下で語らい、料理を味わっている。飾らない雰囲気が窓を伝わって外にまで漂ってくる。こういうお店の料理は美味しいに違いない。しばしためらっていたが、勇気を出して扉を開けてみた。

【ポルトガル】レゲンゴスのワイン

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アレンテージョの平原の彼方に夕陽が沈んでいく。
やがて、沈黙の音色が……。

ポルトガルを旅している間、一冊の本を読んでいた。アントニオ・タブッキの『レクイエム』である。真夏のリスボンを彷徨う旅人の1日を描いた物語。ポルトガルが生んだ詩人、フェルナンド・ペソアへの文字通り鎮魂曲でもある。この本をしのばせてきたのは、同じタブッキの作品『インド夜想曲』と同様、「彷徨い感」をおおいに刺激してくれるのではと期待したから、さらには、リスボンの描写が詳しいことから、ガイドブック代わりにも使えるのではと考えたからだ。

念願のモンサラーシュにたどり着き、時間と心に余裕ができたこの日、『レクイエム』のページをめくってみた。読んでいくうちに驚いたのは、猛暑のリスボンが舞台であるにもかかわらず、アレンテージョ地方の話がしばしば、というより異常なくらい多く登場することだ。

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