北へ南へ

so cold

シンガポール→バンコク縦断旅に出るまさに前日、福島県の大内宿を訪れた。

旅行前に風邪でも引いたら、という心配を抱きながらも大内宿に行ってみる気になったのは、日本の雪景色と寒さをうんと味わって身も心もコチコチになってから旅立てば、彼の地での「とろけ具合」も格別なものがあるのではないかと考えたからだった(実際には、PENTAX K10Dを買ったばかりで撮る気満々の友達の誘いを断れなかっただけなのだが)。その目論見は当たり、翌日の深夜、シンガポールに降り立ったときには、東南アジアのあのまとわりつくような空気と熱気に包まれて、身も心も一気にとろけ、ゆるんでいくようなこの上ない至福を覚えたのだった。

もっとも、翌朝からは赤道直下の陽射しのあまりの強さに音を上げることにもなった。陽光は同じように燦々と降り注いでいるように見えるのに、日本とここではどうしてこうも強さが違うのだろう。理屈ではわかっていても、身体と心はそう簡単には納得、順応してくれない。この「ずれ」を体感し、それとどのように折り合いをつけていくかが旅の楽しさでもある。この縦断旅では、そのプロセスをこれまでにないほど楽しんだと言えるかもしれない。

そんな南国の熱さに浮かされ、とろけすぎたのか、GRDをなくすという今までにないアクシデントにも一方では見舞われてしまった。結局、大内宿で撮ったこれらの写真が、我がGR DIGITALが手元に残していった最後の作品となってしまった……。今思えば、予兆のようなものはあった。まず、充電器を家に忘れて旅立ってしまったこと。それまでありえないことだった。マラッカでそれに気づいてからは撮影枚数をかなり節約し、代わりにフィルムカメラで撮るようにしていたのだが(結果的にデータ紛失の程度は最小限で済んだ)、単四電池で動作することを思い出して電池を購入し、これでバシバシ撮れるぞと意気込んだその数時間後に、今度は本体とデータが紛失……。GRDで撮らせまいという何者かの意志が働いたとしか思えない。それは一体何者だよって感じだけど。

そして帰国後、PENTAX K20Dが発売されることを知った。何も知らず思い切ってK10Dを買った友達、今頃さぞかし悔しがっているだろうなと気の毒に思うと同時に、ひょっとしたら写真の神様はGRD IIではなくK20Dをぼくに買わせたがっているのかな、などと推測してみたり。マイレージを利用したとはいえ旅行後なので購入資金などあるわけないのだけど、買わせたがっているのなら、どこからかお金が降ってくるでしょう、きっと(笑

Ttblog_080203d 

8件のコメント

  1. あづま川
    2008年2月6日

    >kanaさん
    お久しぶりです! お元気でしたか?
    サイトが見えなくなっちゃったので心配してたんですよ~。
    「本当に大切なことは写真には写らない」。それは写真に限らず、文学にも絵画にも音楽にも同じことが言えますよね。限界があることをわきまえつつ、その限界を越えようと迫っていくのが表現活動なのではないかと思います。なんていって、まあ難しいことはよくわかりませんけれど。ぼくはただ自分がいいなと感じた光景を収めているだけです。たぶんこれからも。
    kanaさんも今年も写真を楽しんでください。
    >oink_oinkさん
    カメラなくしちゃいましたよ~。寒い地からいきなり熱い国に行ったから、
    頭も心もふにゃふにゃにとろけてたせいです、きっと。
    マレーシアの町はもうRestoranだらけで、この看板を見かけるたびになんかいいなあと
    クールににやけてました。町の色もキッチュでしたよ。黄色、赤、緑・・・。
    雑貨もキッチュでした。カエルやブタくんもいたよ。
    これから少しずつ写真をアップするのでまた見に来てくださいね。

    返信
  2. oink_oink
    2008年2月5日

    おかえりなさーい!ご無事で何よりです。
    と言うか、旅の達人・あづま川さんでもさすがにカメラのアクシデントには勝てなかった…上に、なくしちゃった???なんて、何だか暑い国をクールに旅していたのかと思ったら…
    ありゃー、びっくりですね…。
    なのに、あづま川さんがポジティヴなのがかっこいいです。
    (私だったら立ち直れない…)
    まぁ、物には寿命があるから、案外おっしゃるとおり、次の出会いのための別れかも知れませんね…(高くつくけど…)
    フィルムでの記録は残っているようなので、少しずつupされていく写真を楽しみにしてます。
    (それにしても、「Restoran(←笑える…)」の写真の色!!すごーくキッチュで、看板のスペルとともにとってもいい味出してますね!現地の空気をすごく感じます)
    それにしても、北国に行って、南国に行って、戻ってきたら東京は極寒で…
    身体、大丈夫ですか?
    お留守にしていた分、お仕事が大変と思いますが気をつけてくださいね。

    返信
  3. kana
    2008年2月5日

    あづま川さん
    お久しぶりです。kanaです。
    久しぶりに来てみたら、旅に出られていてすでに帰国されていて、カメラをなくすというアクシデントにも遭われていて…、いろんなことがあったんですね(^-^;
    でも、ご本人が無事で、それが何よりです。
    カメラ(写真)は、私も山のように撮りながらいつも思うんですけど、「本当に大切なことは写真には写らない」。あづま川さんと違って、タイミングの下手さ加減を言い訳にしているわけではなくて、何て言えばいいんだろう……。だって、好きな人と手をつないでいるその瞬間の心地良さを、じゃあ写真は描写出来るのか?とか、そういうような話です。それを何かに置き換えて表現することは出来るけど、そのことそのものは写真には写せない…、何となく、撮れば撮るほどそんな風に感じます。
    何か答えようのない話ですみません。
    でも、経験知を人と共有出来ると言う意味では非常に優れたメディアですよね。
    写真は好きです。ハイ。
    あづま川さんの次なる境地を期待しています。

    返信
  4. あづま川
    2008年2月4日

    >ジーエルさん
    こちらこそご無沙汰しております。
    旅の終わりにフィルムを全部失う・・・それはさぞかし大ショック
    だったことでしょう。
    ぼくはフィルムは無事だったのでショックは小さかったのですが、
    フィルムまで失ってたら立ち直れなかったかも。
    再確認の旅に出た気持ちも、そこで味わった切なさも、なんだか
    よくわかるような気がします。
    写真は撮れても、最初の旅で受けた印象はもう決して取り戻せない。
    でも心の中にはしっかりと刻まれている・・・。それもまたよし、ですよね。
    新しいカメラを買うためにも今月はがむしゃらに働かなくては。
    >ヒョウちゃん
    K20Dは気になりますが、K10Dより数万ほど高そうですね。
    そんなお金はどこにもないので、それこそ先日の雪のように降ってくるのを
    待つしかないです。
    やっぱりGRD IIか、あるいはGX100にしようかな。
    >眞紀さん
    南国写真はまだ現像に出しているので。デジがないと速報性という意味では
    つらいですね。
    眞紀さんのダンナさんがGRD IIに飽きたら譲ってもらおうかな(笑
    >puchioさん
    K10Dの後継機がもうすぐ発売されるみたいです。サイトに特集ページができてますよ。
    ただ価格はそれなりにするので、今のところは神頼みというところです(笑
    っていうかGRD II一緒に買うんじゃなかったの~。

    返信
  5. puchio
    2008年2月4日

    ペンタ、動きでたんですか~?
    いつか一眼買うならペンタがいいな~と思っていた頃に
    だんだん雲行きが怪しい感じになっていたんで、一眼市場
    をずーっと傍観しているだけでした。が、あー物欲が。(笑)

    返信
  6. 三谷眞紀
    2008年2月4日

    おかえりなさい。
    南国写真いっぱいかと思って見に来たら、予想を軽ーく裏切って雪国の景色。
    やりますねえ。
    しかしこれがGR最後のカットたちかと思うと感慨もひとしお。

    返信
  7. ヒョウちゃん
    2008年2月4日

    実は、ジョホールバルで、MZ-3のバッテリー低下に見舞われまして、巻き戻しが完全に終わらないうちに、裏ぶたを開けるという失敗をしてしまいました。
    数カットだめにしているので、翌日撮り直しました。
    K20D気になりますよね。
    でも、画角が変わってしまうので、新たにレンズを購入しなくてはならないし、すべて持って行くと重そうだし。
    わたしゃ、当分銀塩で頑張ります。
    しばらく、旅に出そうにないので、MZ-3はオーバーホールにでも出そうかな。

    返信
  8. ジーエル
    2008年2月3日

    お久しぶりです。
    カメラの紛失と、その中の画像データの紛失、ショックです
    よね。でも、それが次の何ものかへ向わせるエネルギーになれば、
    それはそれでまたよしですかね。しかし、それにはお金も必要という
    のがまたつらいところですね。
    実は僕は旅の終わりに撮影済みのフィルムを全部失うという失態を
    演じたことがあります。それから失われた映像の場を再確認する旅に
    何度も何度もでかけました。しかし、当たり前のことですが、同じも
    のは得られずじまい。そして、それらの旅は、失われた映像が記憶の
    中でどんどん美しくなる一方という切なさを感じる旅となりました。
    しかし、それもまたよしでした、今となっては。
    失われたデータが少なかったのは不幸中の幸いですね。
    でも、GRデジタルに代わる新たなカメラで撮りまくる日は、意外と
    早くやってくるかもしれませんね。

    返信

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